加齢黄斑変性とは?その原因や症状を解説
2019.12.10
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加齢黄斑変性とは、年を取ることによって眼の黄斑に異常が生じ、視力が低下したり、視界が歪んで見えるようになったりする病気です。
我が国では、失明に至る原因のトップ5に含まれています。
どうして、年を取るとこのような病気を起こすリスクが高まってくるのでしょうか。
今回は、加齢黄斑変性について、その原因や症状についてわかりやすく解説します。
黄斑(おうはん)とは
黄斑とは、眼の網膜の中心の直径6[mm]ほどの範囲の部分で、光を感じる感度が最も高いところです。
ヒトは、黄斑で明るいところでの視力と色覚を受け持っており、ここで文字を読んだり、色を見分けたりしています。
したがって、黄斑に病気が起こり、その働きが低下すると、視力が下がったり、色がわからなくなったりします。
もし黄斑の中心部が破壊されると、視力はたちまち0.1以下に下がってしまいます。
それだけ黄斑はヒトの視力にとても大切な部分なのです。
加齢黄斑変性とは
黄斑に異常をきたした病態を黄斑変性といいます。
黄斑変性は、遺伝性(家族性)黄斑変性・若年性黄斑変性などいろいろなタイプがあります。
このうち、加齢によって起こる黄斑変性が加齢(老年性)黄斑変性です。
加齢黄斑変性になると、視力に関係する網膜の神経と、色覚に関係する色素上皮という部分の両方に異常が生じます。
加齢黄斑変性の種類
加齢黄斑変性には、滲出型と萎縮型の2種類があります。
なお、日本人によく見られるのは滲出型です。
滲出型加齢黄斑変性
滲出型加齢黄斑変性は、新しく異常な血管が作られて網膜と色素上皮の間に広がっていくことで、網膜が傷つけられておこる病気です。
異常な血管は、正常な欠陥よりも脆く、破れたり血液が漏れ出したりしやすい性質があります。
そのため、網膜を腫れさせたり、網膜の下に血液がたまったりして、網膜を傷つけてしまうのです。
萎縮型加齢黄斑変性
萎縮型加齢黄斑変性では、新しい異常な血管は作られません。
こちらは、網膜の色素上皮が少しずつ縮んでいくことで、網膜が傷み視力がゆっくりと低下していく病気です。
加齢黄斑変性の原因
滲出型加齢黄斑変性
色を感じる網膜の色素上皮という部分は、網膜の細胞の老廃物を取り除く働きを持っています。
ところが年を取るにつれて、この働きが低下していきます。
すると、本来取り除かれるべき老廃物が残ったままとなります。
この老廃物を取り除くために、脈絡膜というところから新しい血管が伸びてきます。
この新しい血管が網膜と色素上皮の間に入り込み、網膜を傷つけます。
こうして滲出型加齢黄斑変性が起こります。
萎縮型加齢黄斑変性
萎縮型加齢黄斑変性では、血管の新生は生じません。
加齢によって網膜の視神経や色素上皮が萎縮してしまうのが原因で起こります。
加齢黄斑変性の症状
前述しましたように、黄斑は網膜の中心部にあります。
中心部にある黄斑に異常が生じる病気ですので、症状は視野の中心付近に現れます。
まず、ものが歪んで見える、小さく見える、暗くなるなどの症状が起こります。
ついで、視力が低下し始めます。
視力が低下するスピードは、人それぞれ異なり、速い人もいればゆっくり進む人もいます。
なお、黄斑に異常が生じても、痛みは感じません。
片方の目だけに生じることもあります。
歪んで見える
加齢黄斑変性になると、視野の中心部分の直線のものが曲がって見えるようになります。
例えば、真っ直ぐ立っているビルがぐにゃっと曲がって見える、表やグラフの枠などの直線部分が曲がって見えるという具合です。
これは、網膜が腫れたり、網膜の下に液体が溜まったりすることで、網膜が歪んでしまうために起こる症状です。
あくまでも黄斑の網膜だけが腫れたり、その下部に液体が溜まったりしているので、黄斑の周囲には異常は起こっていません。
そのため、中心付近だけ歪んで見えるのです。
暗くなる
視野の中心付近は、本来は最もはっきりと見えるはずの部分です。
加齢黄斑変性になるとこの部分が暗くなり、はっきりと見えなくなってきます。
これを中心暗点といいます。
そのために、正面にいる人の表情がわかりにくくなる、前から歩いてくる人が誰かわかりにくくなる、新聞が読みにくくなる、文字が書きにくくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。
これは、網膜の黄斑部分の腫れや液溜まりが進行した結果生じます。
一般的に中心暗点は徐々に進行し、やがて視力が0.1以下になりますが、網膜の下で大出血が起こると急に目が見えなくなることもあります。
色がわからなくなる
網膜の腫れや液だまりが進行すると、ものの色がわからなくなります。
加齢黄斑変性になりやすい人
年齢性別
加齢黄斑変性は、40代以上の方なら誰にでも起こりうる病気です。
我が国では50代以上の方の80人に1人に生じています。
男女間での発症割合で比較してみると、男性の発症割合が高い傾向が指摘されています。
生活習慣
加齢黄斑変性に関係する生活習慣としては、タバコがリスク要因として指摘されています。
タバコにはビタミンCを破壊する性質があります。
身体の細胞の老化には、活性酸素による酸化が大きく影響しています。
ビタミンCは、細胞の酸化を防ぐ働きを持っています。
このビタミンCをタバコは破壊してしまうために、眼の細胞の老化が進みやすくなるのです。
タバコを吸う人とそうでない人を比べると、4倍も加齢黄斑変性の発症リスクが高まります。
遺伝
最近、滲出型加齢黄斑変性に関係する遺伝子が発見されました。
この遺伝子を持っていると、そうでない人と比べて発症率が1.4倍になると言われています。
もし、ご家族の中に加齢黄斑変性を起こした方がいる場合、注意しておいた方がいいでしょう。
その他
その他、太陽光線、肥満、動脈硬化、高脂肪食などがリスク要因として挙げられています。
国内の加齢黄斑変性患者数
日本老年医学会の報告に加齢黄斑変性患者の統計に関するデータがあります。
同学会雑誌の報告では、福岡県久山町の住民を対象とした調査が行われた統計調査を参考にしています。
1998年には、加齢黄斑変性の患者数は50歳以上の人口の0.9%でした。
2007年になると人口の1.3%でしたので、10年ほどの間に増加しています。
また、男女比は男性=2.2%、女性=0.7%で男性が女性よりも高い比率で発症していることがわかります。
このデータから、日本国内の推定患者数はおよそ70万人ほどと考えられています。
まとめ
今回は、高齢者の視力低下の原因の一つである加齢黄斑変性について解説しました。
加齢黄斑変性は、加齢によって黄斑に異常が生じる病気で、視力低下や色覚異常など眼の見え方に影響します。
加齢黄斑変性には、滲出型と萎縮型の2種類があり、日本人に多いのは前者のタイプです。
これは、異常な血管が網膜と色素上皮の間に広がっていくことで生じます。
加齢黄斑変性の症状としては、
- ものが歪んで見える
- 視野の中心部分が暗くなる
- 色がわからなくなる
などが挙げられます。
こうした症状が少しずつ進行する場合もあれば、急激に進行していくこともあります。
加齢黄斑変性は、40代以降なら誰にでも起こり得る病気ですが、女性よりも男性に多く見られ、喫煙者は非喫煙者の4倍ものリスクがあります。
我が国では、70万人ほどの患者がいると考えられており、予防するためには目に異常を感じていなくても、中高年になったら眼科で定期的に検査を受けることをおすすめします。