白内障手術後のハロー・グレアとは?

2021.09.10

白内障手術後のハロー・グレアとは?

白内障の手術を受けたあと、街の明かりや車、オートバイなどのヘッドライトの光が、通常の状態とは異なり、何か輪っかがかかったようににじんだり、やけにギラギラして見えたりすることがあります。

この現象のことを「ハロー・グレア」といいます。ハロー・グレアは、手術の際に入れた眼内レンズの影響により起こります。

特に多焦点眼内レンズを入れると起こりやすいのですが、現在の多焦点眼内レンズの中には、ハロー・グレアが発生しにくいように考えられた製品もあります。

白内障の手術

白内障の原因は、ほぼ9割が加齢です。先天性、糖尿病の合併症として発症することもありますが、歳をとると白内障になりやすいと考えていいでしょう。

白内障になると視力が落ちたり、目がかすんだり、何か視野が暗くなったり感じるようになります。しかし、白内障では目に痛みを感じることはありません。ただ、このような症状があると、生活に支障が出てくるので、症状が軽度であれば薬物治療、進行してしまっている場合は手術による治療が一般的です。

白内障の手術は、長くても30分程度で終わる、患者さんにとっても負担の少ない手術です。

手術は、目の「水晶体」と呼ばれる部位を眼内レンズにすることで行います。白内障を患うと、この水晶体が濁ったように見えます。

この濁った水晶体をとりのぞくのですが、この際は、当然ながら麻酔を使用しますので、痛みを感じることはほとんどありません。

ただ、この眼内レンズが乱反射してしまうことで、ハロー・グレアが発生してしまいます。

眼内レンズ

眼内レンズは直径6mm程度の大きさです。目の中に組み込むので心配になってしまうかもしれませんが、やわらかく、とても安全な素材でできています。メンテナンスも特に必要ありません。

眼内レンズは、主に2種類あります。「単焦点眼内レンズ」と「多焦点眼内レンズ」です。

単焦点眼内レンズは、ひとつの場所にしかピントが合わないレンズです。たとえば、100メートル先のビルに焦点を合わせたとすると、目の前にある物はぼやけて見えます。

一方、多焦点眼内レンズの場合は、100メートル先と目の前、どちらにもピントを合わせることが可能なので、どちらもはっきり見えます。しかも、今までメガネをかけていた人は、外せる場合もあります。

多焦点眼内レンズは、焦点距離の異なるいくつかのタイプがあるので、患者さんご自身の生活スタイルを考慮して選びます。

手術により多焦点眼内レンズを入れ、白内障を治療することは、このように非常にメリットが多いのですが、ご紹介しているように、ハロー・グレアに悩まされる可能性もあります。

ハロー・グレアとは

ハロー・グレアは、すでにご紹介したとおり、白内障の手術で多焦点眼内レンズを入れることで、特に夜間などに車のヘッドライトの光などがぼんやりとにじんだり、ギラギラして見えたりする現象です。ちなみに「ハロー」がぼんやりとにじむ状態、「グレア」がギラギラして見える状態のことです。

ハロー・グレアは、多焦点眼内レンズ以外の原因で起こることもあります。レーシック手術や角膜の混濁がハロー・グレアを引き起こすこともあります。

ハロー・グレアは、時間が経過すると、ほとんどの患者さんが慣れてしまいます。しかし、夜に車やオートバイに乗る方は注意したほうがいいでしょう。

ハロー・グレアが発生するメカニズム

複数の距離に焦点を合わせられる多焦点眼内レンズは、ハロー・グレアを引き起こしやすい構造になっています。

そのため、ハロー・グレアが出やすいことは、多焦点眼内レンズのデメリットだといってもいいのですが、やはり複数箇所に焦点を合わせられることは非常に大きなメリットです。

現在、レンズを製造する側もハロー・グレアを少しでも抑制できるよう努力を続けており、ハロー・グレアをあまり感じさせないレンズも登場してきています。

ハロー・グレアは暗くなってから発生します。暗くなると人間の瞳孔は開き、昼間より横方向からの光が入りやすくなります。

そのために、レンズ内で乱反射が起こり、ぼんやりと見えたり、ギラギラして見えたりするわけです。

ハロー・グレアが発生するレンズに問題はない

ご紹介したように、多焦点眼内レンズはどうしてもハロー・グレアを引き起こしやすい構造であり、ハロー・グレアは「使いやすい」という大きなメリットの裏側にあるデメリットなのです。したがって、レンズに問題があるわけではありません。

レンズによっては物体が二重に見えるゴーストという現象が起こる場合もあります。ゴーストも、ハロー・グレアと同じく、ほとんどの人がしばらくすると慣れてしまいます。

しかし、中には慣れることができず、生活に支障を感じる人もいるので、そのような場合はレンズを交換することもあります。

白内障の手術で入れるレンズは生活に合わせて選ぶ

白内障の手術で入れるレンズは、生活のスタイルに合わせて選ぶことが大切です。レンズの構造上、どうしてもメリットとデメリットがあることは、現状、仕方ありません。できるだけ生活に不便が出ないレンズを選びましょう。

ハロー・グレアは暗い場所で光を見ると感じる現象なので、夜間に外出しない人ならば、ハロー・グレアを見ることなく生活できるでしょう。

しかし、夜間に車やオートバイに乗る人は、運転に支障が出る可能性があります。光により危険を感じるようなら、ことは重大です。このような事態を避けるには、白内障の手術を受ける前に、医師と十分に話し合ったうえで適切なレンズを決めることが大切です。そのためにも、信頼のできる眼科医にかかる必要があります。

後発白内障にも注意

手術により白内障を治療する場合でも、水晶体をカバーしている部分についてはそのまま残します。その部分が濁ってくることを後発白内障といいます。

白内障の手術をした直後は、目が慣れていないため、あまりよく見えない場合があります。そのため、手術のあとは安静にして、目をこすったり、さわったりしないようにしなければなりません。それ以外にも目薬をさすことや、洗顔、たばこやお酒も禁物です。

術後にこのような行動をすると、後発白内障になってしまうことがあります。後発白内障は、手術をしなくても治療が可能ですが、せっかく手術をしてこれからというときに、また白内障になってしまっては大変です。手術が終わっても油断せず、医師の指示どおりに過ごすことが大切です。

白内障手術をすると乱視の軽減も可能

ご紹介したように、白内障の手術では水晶体をレンズに入れ替えます。

レンズには、乱視を抑える機能をもつものもあります。トーリック眼内レンズと呼ばれるレンズです。

このレンズは、すべての乱視に有効なわけではありません。しかし、白内障と同時に乱視も軽減できるのですから、乱視の人にとってはすばらしいレンズです。

まとめ

白内障手術を受けると、ハロー・グレアという現象に悩まされることがあります。

ハロー・グレアは手術の際に水晶体と入れ替えるレンズ(多焦点眼内レンズ)により起こります。

多焦点眼内レンズは、距離の異なる物体でもピントを合わせることができる優れものですが、その副産物として、夜になると街灯や車のヘッドライトなどがぼやけたり、ギラギラしたりして見えるハロー・グレアが起こる場合があります。

ハロー・グレアはほとんどの人が慣れてしまいますが、夜に屋外で活動することが多い人は特に、医師と相談してレンズ選びを慎重に行う必要があります。