どうして視力低下が起こるの?気になる目の血行との関係性について
2019.08.30
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誰しもが起こりうる症状である視力低下。
この視力低下には眼の血行と大きな関係があるとご存知ですか?
このページでは視力低下と眼の血行の関係についてとを解説します。
視力低下とは
視力低下といっても、進行の仕方はさまざまで、急激に進行する視力低下もあれば、徐々に進行する慢性的な視力低下もあります。
発現した時期もいろいろで、先天性視力低下という生まれつきの視力低下と、そうでない後天的視力低下に分けることもできます。
後天的視力低下としては、近視や遠視、乱視、老眼などの目のピント調節力の低下によって起こる視力低下が知られています。
今回のテーマである目の血行が関係する視力低下は、後天的視力低下に含まれ、突然発症するタイプもあれば、徐々に進行していくタイプもあります。
後天的視力低下には、パソコンやスマートフォンの普及といったライフスタイルの変化や、目の血管系の病気が大きく影響しています。
パソコンやスマートフォンによる視力低下
現代社会では、パソコンやスマートフォンがかなり普及し、全く使わない日が想像できないくらいにライフスタイルが変化しました。
これに伴い、近年、増えつつあるのが、パソコンやスマートフォンを使いすぎることで目の血流が悪くなって起こる視力低下です。
パソコンやスマートフォンを操作するとき、あまり気にしないかもしれませんが、私たちは意外と目を酷使しています。
長時間、画面を見続ける、つまり目を酷使し続けると、目の血行がどんどん悪くなっていきます。
目の血行の悪化は、実は視力低下と密接に関係しています。
パソコンやスマートフォンが目の血行を悪くする原因
パソコンやスマートフォンを見続けると、どうして目の血行が悪くなり、視力低下が起こるのでしょうか。
筋肉の凝りによる血行の低下
目の奥には、外眼筋(がいがんきん)という筋肉があります。
外眼筋は、上直筋・下直筋・内直筋・外直筋・上斜筋・下斜筋の6本の筋肉から成り立っています。
これらの筋肉の働きで、目を支えるだけでなく、目を右や左、上下に動かしています。
パソコンやスマートフォンを長時間見て、何らかの作業を続けている間は、目を動かす回数も範囲も少なくなります。
その結果、外眼筋をあまり使わなくなるので、外眼筋が凝り固まってしまいます。
筋肉が凝り固まると、その周囲の血液の流れが悪くなることが知られています。
目の外眼筋も同じで、外眼筋の凝りが目に酸素や栄養を供給する血行を減少させてしまいます。
その結果、目の働きが低下し、徐々に視力低下を引き起こします。
ドライアイによる血行の低下
目の周囲には、マイボーム腺という涙を分泌するところがあります。
まばたきをすると、このマイボーム腺から涙が出て、目を潤し、目を閉じると、涙点という排出口から涙を排出しています。
こうして目は、目の表面の乾燥を防いでいます。
ところが、パソコンやスマートフォンを長時間見続けていると、まばたきの回数が知らず知らずのうちに、減少していきます。
仕事でしっかりと見つめているときはもちろん、趣味や、単なる暇つぶしで見ている時も同じです。
まばたきの回数が減少すると、涙の分泌が減ってしまうので、目が乾燥し、ドライアイとなります。
本来、目は潤っているところなので、乾燥には弱い器官です。
その目が乾燥してドライアイになると、目が乾燥に負けて炎症を起こします。
炎症を起こしたところの血液の流れは、正常な部位と比べると悪化していますので、ドライアイによる炎症は、目の表面への血液の流れに悪影響を及ぼします。
血液は酸素や栄養を細胞に届ける役割を果たしていますので、目の表面の細胞が酸素や栄養不足に陥ることで目の働きを悪化させ、視力低下につながります。
つまり、パソコンやスマートフォンを見続けることが、まばたきの回数を減らし、ひいてはドライアイによる視力低下を起こしてしまうのです。
目の血行改善による視力低下の予防法
パソコンやスマートフォンによる目の血行の悪化を改善させ、視力低下を予防する方法をご紹介します。
外眼筋のストレッチ
外眼筋のストレッチは、外眼筋のコリをほぐし、血液の流れを改善させるのにとても有効です。
そこで是非試してみて欲しいのが、『指スライド法』です。
- 左右どちらでもいいので、片手をまっすぐ前に伸ばします。
- 親指を立てて、1秒くらい親指をしっかりと見ます。
- 腕を伸ばした位置の真ん中くらいの位置にまで引き戻します。
- その位置で、親指を1秒くらいしっかりと見ます。
- 腕をもっと近づけ、同じように親指を1秒くらい見ます。
これだけで、外眼筋をほぐすことができます。
時間もかからず、自宅だけでなくオフィスなど、どこでもできる手軽な方法ので、ぜひ試してください。
温める
目に蒸しタオルを置いて、目を温めてみるのも、目の血液の流れを良くするのに効果的です。
しかも、毛様体筋という目のピント調節機能を担っている筋肉をほぐし、ピントを合いやすくする効果もあります。
目が疲れたと感じた時は、蒸しタオルを置いてみるなど、目を温めてみてください。
目の病気による視力低下
目の血管に生じる病気が、目の血行を悪化させ、視力低下を引き起こすことがあります。
目の血行を悪化させる原因となる病気としては、網膜動脈や網膜静脈を詰まらせるさまざまな塞栓症が挙げられます。
塞栓症は、中心部分で血管が詰まる中心動脈塞栓症や中心静脈塞栓症、枝分かれした先で詰まる分枝塞栓症に分けられ、詰まった部分によって現れる症状も異なります。
網膜中心動脈閉塞症
網膜中心動脈とは、眼動脈から分かれて網膜に栄養を供給している動脈です。
網膜中心静脈閉塞症とは、この動脈が視神経乳頭という目の神経線維が集まっているところで詰まってしまい、網膜全体に血液が流れなくなってしまう病気です。
この病気は、身体の他の部分で作られた血栓が詰まるタイプと網膜中心動脈が動脈硬化によって詰まってしまうタイプに分けられます。
どちらのタイプであっても、網膜に血液が流れなくなると、40分程度で網膜の神経の機能が低下し始め、1時間程度で網膜は壊死を起こし、瞬時に視力低下をもたらします。
治療法は、血栓を溶かす血栓溶解薬や網膜の血液の流れを改善させる血液循環改善薬などによる薬物治療や、まぶたの上から目を圧迫する眼球マッサージなどが行われます。
こうした治療は、発症から1時間の間に行わなければならず、もし治療が間に合わなければ、網膜の血液の流れが悪くなったまま隣、視力が戻ることはないとされています。
網膜動脈分枝塞栓症
網膜中心動脈血栓症と異なり、網膜動脈の枝分かれした先の部分がつまり、血液が流れなくなる病気です。
網膜動脈分枝塞栓症では、枝分かれした先の詰まった網膜部分だけ血液が届けられなくなり、それ以外の網膜は普通に働いています。
そのため、症状は詰まった部分に相当する網膜の症状に限られ、例えば上半分の網膜が詰まったのなら視野の下半分となります。
もし、詰まった結果、黄斑という網膜の中心部分への血液が流れなくなると、視力低下を引き起こします。
網膜中心動脈塞栓症と同じく、突然視力が低下するのが特徴です。
治療法も、網膜中心動脈閉塞症と同じです。
網膜中心静脈閉塞症
網膜中心静脈閉塞症とは、網膜静脈根元の部分で静脈が詰まってしまう病気です。
網膜中心静脈は、網膜中心動脈と並んでいるので、網膜中心動脈が動脈硬化や動脈の急激な血圧変動を起こしたりすると、容易に圧迫されてしまいます。
圧迫を受けることで静脈が狭くなり、詰まってしまいます。
この病気は50代以上の高血圧症患者によくみられます。
原因は、高血圧症が最も多いのですが、動脈硬化も挙げられており、血圧がさほど高くなくても、動脈硬化の進展次第では発症することもあります。
症状は、突発性の片目の視力低下で、痛みもなく目も充血しません。
中には全く症状がないこともあります。
治療は、血栓溶解薬や血液循環改善薬による薬物治療が行われたりしますが、なかなか難しいとされています。
もちろん、高血圧症の治療も必要です。
網膜静脈分枝閉塞症
網膜中心静脈閉塞症が網膜静脈の根元部分で詰まることに対し、網膜静脈分枝閉塞症とは、枝分かれした部分が詰まる病気です。
網膜静脈分子閉塞症では、詰まったところから先の部分で、静脈血がたまり、出血します。
原因は、網膜中心静脈閉塞症と同じく、高血圧症や動脈硬化です。
症状は、出血した部分にあたる視野の欠落や出血の程度に応じた視力低下です。
この病気の治療法は、血栓溶解薬や抗凝固薬などを使った薬物治療で、詰まった部分の血液を溶かして血液の流れを再開させたり、血管のバイパスを形成したりするのが目的で行われます。
そのほか、出血を早期に抑えるために、網膜光凝固療法が行われることがあります。
出血しているところに直接光凝固を加えることで、出血を抑える治療法です。
出血と、それに伴うむくみは数週間で解消されます。
網膜中心静脈閉塞症と同じく、高血圧症の方なら、高血圧の治療も重要です。
まとめ
今回は、目の血行と関係する視力低下について解説しました。
視力低下というと近視をイメージしがちですが、実は遠視や乱視も視力低下に含まれ、視力障害ともよばれます。
視力低下を引き起こす目の血行の低下は、生活習慣や病気によってもたらされます。
生活習慣の面では、近年使用頻度が高くなっているパソコンやスマートフォンが大きく影響しています。
長時間、画面を見続けることで、目の筋肉が凝り固まったり、ドライアイを起こしたりすることが目の血行を低下させ、視力低下の原因となるのです。
病気では、網膜の血管である網膜中心動脈や網膜静脈などの血管が詰まり、目の血行が悪くなることが原因となり視力低下を引き起こします。
生活習慣による視力低下では、ストレッチなどで、症状の改善が期待できますが、病気による視力低下ではそういうわけには行かず、病院を受診し、適切な診断と治療を受ける必要があります。