加齢黄斑変性を治す方法とは?

2019.12.04

加齢黄斑変性

中高年の方で、ものが歪んで見えるようになった、視力が低下してきたなど、ものの見え方がおかしくなってきたらそれは加齢黄斑変性という病気かもしれません。

加齢黄斑変性は、有効な治療法が確立されていなかったのですが、最近ではいろいろな治療法が開発されています。

今回は、加齢黄斑変性の治療法についてお話しさせていただきます。

加齢黄斑変性とは

加齢黄斑変性とはいったいどんなものなのか?

ここから詳しく解説していきます。

黄斑変性とは

黄斑とは、眼の網膜の中心部にあり、ものを見るために大切な視細胞がたくさん集まっているところです。

この部分は黄色の色素が多く、黄色く見えるのでそう呼ばれています。

黄斑は、網膜の中心にある直径数[mm]のごく小さな部分なのですが、私たちがものを見るためにとても重要な部分です。

この黄斑に異常が生じる病気が黄斑変性です。

黄斑変性を生じると、ものが歪んで見えたり、はっきり見えなくなったりし、最悪の場合は失明に至ることもあります。

実際、欧米では失明の原因第1位となっています。

加齢黄斑変性とは

黄斑変性にはいくつかの種類がありますが、加齢によって生じるのが加齢黄斑変性です。

その加齢黄斑変性には、滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性の2種類あります。

滲出型加齢黄斑変性は、日本人に多いタイプで、新しい異常な血管が網膜の外側から伸びてきて、網膜を傷めることで視力が低下する病気です。

萎縮型加齢黄斑変性は、黄斑が萎縮して視力が低下していく病気です。

欧米人に多く、進行が比較的ゆっくりしているのが特徴です。

加齢黄斑変性の診断

加齢黄斑変性
加齢黄斑変性の検査は、視力検査と眼底検査などを行います。

視力検査

加齢黄斑変性の主症状は、視力の低下として現れます。

そこで、健康診断でお馴染みの視力表を使って視力を測ります。

アムスラーチャート検査

アムスラーチャートという中心部に黒い点を記した方眼を見る検査です。

加齢黄斑変性の場合、方眼の線がぼやけたり、中心部分が歪んで見えたりします。

方眼の一部が欠けて見えることもあります。

眼底検査

眼底とは、眼球の後ろ側の内面を覆っている網膜のことです。

この眼底部分を見る検査が眼底検査です。

眼底検査では、まず瞳を開ける目薬をさします。

すると、瞳を通して眼の奥、つまり眼底部分が見えるようになります。

こうして直接、眼底部を観察します。

眼底検査をすれば、黄斑に異常が生じていればそれが目で見えるのでわかります。

蛍光眼底造影

蛍光眼底造影とは、蛍光色素が含まれた薬剤を腕の静脈に注射し、眼底部の血管の異常を調べる検査です。

滲出型加齢黄斑変性で見られる新しい異常血管があるかどうか、そこから漏れた血液がどこに溜まっているのかなどがわかります。

加齢黄斑変性になってしまったら

加齢黄斑変性と診断されたらどうすればいいのでしょうか。

滲出性加齢黄斑変性と萎縮性加齢黄斑変性とでは、対策が異なります。

滲出性加齢黄斑変性の場合は、すぐに治療を始めてください。

ところが、萎縮性加齢黄斑変性は、現在のところ有効な治療法が確立されておりません。

さらに症状が進行しないように、生活習慣を改善したり、サプリメントを飲んだりする予防策をするほかありません。

加齢黄斑変性は自然治癒しない?

加齢黄斑変性は、残念ながら自然に治ることはありません。

進行する速さには個人差があり、ゆっくりと進む人もいれば、急速に進んでいく人もいます。

どちらにしても、進行していくことには変わりがありませんので、放置することなく眼科で適切な処置を受けることが大切です。

加齢黄斑変性の治療

目の手術
加齢黄斑変性の治療法は、現在は抗血管新生療法が主流です。

抗血管新生療法

抗血管新生療法は、滲出性加齢黄斑変性に対して行われる治療法です。

滲出性加齢黄斑変性は、新しい異常な血管が生まれることによって起こります。

原因となる血管は、血管内皮増殖因子というタンパク質が作用して生み出されます。

そこで、このタンパク質の発生を抑える薬を使い、新しい異常な血管ができないようにするのが、抗血管新生療法です。

抗血管新生療法では、血管内皮増殖因子を抑える薬を、直接目に注射します。

目に直接注射しますが、入院の必要はなく、外来通院で受けられます。

レーザー治療

新しい異常な血管をレーザーで焼き切る治療法です。

レーザーが当たった部分の網膜の視神経は見えなくなってしまいますが、黄斑変性が広がるのを予防できます。

ただし、網膜の中心部分にのびた異常な血管の処置には使えません。

レーザー治療で治せるのは、新しい異常な血管が黄斑の周辺部から中心にまで及んでいない段階だけです。

光線治療

ベルテポルフィンという光に反応する性質のある薬を注射したのちに、黄斑変性部位にレーザーを当てる治療です。

抗血管新生療法と併用して行われます。

注意事項として、ベルテポルフィンを注射した後は肌が敏感になり日光で火傷したような状態になることがあるので、治療を受けた後は5日程度の外出を控える必要があります。

加齢黄斑変性の治療後

抗血管新生療法を受けた後1週間程度の間は、

加齢黄斑変性を予防する方法

加齢黄斑変性は、中高年になったら誰にでも発症しうる病気です。

ですが、日常生活での心がけで予防することもできます。

禁煙

禁煙
タバコは、加齢黄斑変性の最も大きなリスク要因です。
喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者はなんと4倍も発症率が高くなっています。

これは、タバコがビタミンCを壊してしまう性質を持っているからです。

ビタミンCは、抗酸化物質の一種で、活性酸素によって細胞が酸化されるのを防ぐ働きを持っています。

実は、老化と細胞の酸化は密接な関係にあり、細胞が酸化すれば、それだけ老化も進行します。

タバコは細胞の酸化を抑えるビタミンCを破壊してしまうので、眼の老化も進行しやすくなり、その結果、非喫煙者と比べて4倍もの発症率をもたらしていると考えられています。

したがって、喫煙の習慣のある方は、禁煙するようにしてください。

紫外線を避ける

日光に含まれる紫外線は、網膜にダメージを与える元です。

外出時にはUVカットのサングラスを使うなどして、目を紫外線から守るようにしてください。

食生活

眼の老化を防ぐために、細胞の酸化を抑える抗酸化作用ある食べ物を食べるようにしましょう。

抗酸化作用という点で、まずあげられるのがビタミンCやビタミンE、βカロチンです。

これらを含む食べ物として、大豆や玄米、ニンジン、カボチャ、みかんなどを食べるようにしましょう。

また、細胞の酸化を抑える抗酸化酵素には亜鉛が重要な役割を果たしていますので、亜鉛を豊富に含む牡蠣や海藻類を食べるのもおすすめです。

眼の色素成分であるルテインには、黄斑を守る働きもあるので、ルテインを含有している緑黄力野菜(ほうれん草やブロッコリーなど)もいいですね。

日常の食生活に、ここにあげた食べ物を組み込むことで、加齢黄斑変性を予防しましょう。

まとめ

加齢黄斑変性は中高年の方に生じる病気で、ものが歪んで見える、視力が低下するなどものの見え方がおかしくなる病気です。

欧米では失明の原因の第1位、日本では第4位となっています。

加齢黄斑変性は、滲出型加齢黄斑変性と萎縮型加齢黄斑変性の2種類があります。

日本人に多いのが前者です。

どちらのタイプも今までは治療法がなかったのですが、近年、滲出型加齢黄斑変性の治療法が開発されました。

  1. 抗血管新生療法
  2. レーザー治療
  3. 光線治療

です。

主流となっているのは抗血管新生療法で、これは新しい異常な血管ができないようにする薬を目に注射する治療です。

萎縮性加齢黄斑変性の治療は、現時点ではまだ開発されていません。

加齢黄斑変性にならないようにするには予防が一番です。

予防法としては、

  1. 禁煙
  2. 紫外線を避ける
  3. 食生活の改善

が挙げられます。

特に喫煙は、発症率が4倍にもなるかなりのリスク要因です。

喫煙者の方は、タバコを止めるようにしてください。

そして、中高年になれば誰でも加齢黄斑変性のリスクが高まるので、定期的に眼科で眼の状態を検査してもらうようにしましょう。