白内障とラノステロールの関係。手術をしなくても治る時代がくる?
2018.12.15
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みなさんは、「ラノステロール (lanosterol)」という言葉を聞いたことはありますか?
動物や菌類に広く存在するステロイド、トリテルペノイドで、ラノステロールは、白内障に効果があるとされています。
今回の記事では、白内障とラノステロールの関係と手術をしなくても治る時代がくるのか?について詳しく解説します。
ラノステロールとは
ラノステロール (lanosterol)は、動物や菌類に広く存在するステロイド、トリテルペノイドです。
Wikipediaの情報を元に説明すると、
化学式 C30H50O、分子量は426.7。IUPAC命名法ではラノスタ-8,24-ジエン-3-オール。別名ラノステリン。CAS登録番号は79-63-0。常温では無色の固体で、融点は138-140℃。
ラノリンに多量に存在し、そこから発見されたことから命名された。
動物や菌類のあらゆるステロイド化合物(コレステロール等)の前駆体として重要であるが、生理学的な役割は定かでない。
スクアレンエポキシダーゼによりスクアレンから(3S)-2,3-エポキシスクアレンが合成される。
ラノステロールシンターゼにより環化反応が起こり、プロトステロールカチオンが生成する。
水素イオンが抜けて、プロトステロールカチオンからラノステロールとなる。
このラノステロールは、ラノステロール合成酵素(LSS)よって生成され、元々水晶体に多く含まれている物質なのです。
ラノステロールは白内障の形成を妨げる?
水晶体は主にクリスタリンタンパク質で形成されており、水晶体タンパク質間の相互作用が破壊され凝集すると白内障を発症してしまいます。
これまでに水晶体の透明性を維持する内科的治療法は確立されておらず、唯一の根本治療は混濁水晶体の外科的除去のみとされてきました。
しかし、ラノステロールで白内障形成を妨げるという研究結果があります。
natureに掲載された論文
natureに掲載された「視覚障害:ラノステロールで白内障形成を妨げる」によると、以下のように説明されています。
2015年7月30日
K Zhangたちは、先天性白内障が生じる2つの家系でこの疾病の遺伝的基盤の研究を行い、水晶体に本来的に存在するステロールの一種のラノステロールが、白内障の原因となるさまざまな変異型クリスタリンタンパク質の細胞内での凝集を防止できることを明らかにした。今回の遺伝学的研究で突き止められた変異は、ラノステロール合成を行う酵素であるラノステロールシンターゼの機能を損なうものである。白内障を自然発症するイヌにラノステロールを含む点眼薬を6週間投与すると、白内障の重症度が軽減し、水晶体の透明度が増したことから、ラノステロールや同様の活性を持つ分子が、白内障の治療法として、手術に代わる選択肢になる可能性が出てきた。出典:nature.com
このような研究結果から、ラノステロールは白内障の形成を妨げるのではないかという可能性が出てきたのです。
白内障は手術をしなくても治るようになる?
白内障は、目の水晶体という部分が白く濁って視力が低下することで発症する病気です。
白内障はさまざまな原因で発症しますが、その多くは加齢によるもので、加齢性白内障といます。
個人差はありますが、誰でも歳を重ねるにつれて水晶体は濁りはじめるので、加齢性白内障は老化現象の一種、高齢の方に多くに発症します。
この白内障は、これまでに水晶体の透明性を維持する内科的治療法は確立されていません。
そのため、唯一の根本的な治療は混濁水晶体の外科的除去のみとされています。
natureに掲載された論文によると、“ラノステロールや同様の活性を持つ分子が、白内障の治療法として、手術に代わる選択肢になる可能性が出てきた。”という研究結果があることから、人間の白内障治療法にも許可が出れば、内障が手術をしなくても治るようになる時代も遠かれ近かれくるのではないでしょうか。
ラノステロールのこれから
ラノステロールは、そもそも点眼薬にするのはとても難しい薬剤で実用化は難しいだろうと囁かれてきました。
論文の発表からは3年以上経過し、各国で研究が進められているにも関わらず、実用化されないということは再現実験がうまくいっていないことがわかります。
海外ではペット犬の白内障への点眼薬として市場に出ているようではありますが、人間へ使用するとなると安全性なども含めて更なる研究や国の認可なども必要になってきます。
しかし、研究がうまく進むようであれば、今後ラノステロールは白内障治療の救世主となる可能性はあります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、白内障とラノステロールの関係と手術をしなくても治る時代がくるのか?について詳しく紹介してきました。
まとめると、
- ラノステロールは、動物や菌類に広く存在するステロイド、トリテルペノイド
- ラノステロールは、ラノステロール合成酵素(LSS)よって生成され、元々水晶体に多く含まれている物質
- ラノステロールは、白内障の治療法として、手術に代わる選択肢になる可能性がある
現段階では、人間の白内障治療に使うことは出来ませんが、今後の研究が進み許可がおりれば、白内障治療の救世主となることは間違いなしです。